為末大さんに質問してみたら意外なことが分かった。②

前回のお話

為末大さんに質問してみたら意外なことが分かった。①

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大久保

ここまで聞いて、知的欲求や探究心などがくすぐられ、脳が喜んでいる状態で、「もっと知りたいもっと教えてください」状態でしたが、ここからは質疑応答の時間。

 

事前アンケートから選ばれた質問が出されました。

 

質疑応答

「アスリートが商品的に扱われていることに関してどう思いますか?」

 

これに対して為末さんは

為末大さん

比較的我々みたいな職業をやっていると人に見られることが多いんですね。そうすると、自分の価値をどうやって出していけば良いんだろうといったことになると思うんです。特に若いときにやったことで、今考えると間違えていたなと思うことがあって、それは何かというと、属するコミュニティの信用を積み重ねて自分のバリューを上げるという手法があるんですね。これは、簡単に言うとFacebookの友達の凄い人をコレクションするというやり方で、これは間違っていたなと。やればやるほど苦しくなるなと。

 

     自分を商品化するという一番の本質は、自分の凄さを出していくということだと思うのですが、一方で「これは水なんだけれど、ただの水じゃありません」とするには、下駄を履かせていくという商売になっていくんです。これってやっている本人の中では耐えきれる人もいるんですけれど、耐えきれない人は途中ぐらいから自分のことをクスクス笑い出しちゃうんです。「お前は普通の水じゃん」と頭で分かっていながら「でもこれは普通の水じゃないよ」と一生懸命言うんですが、自分でよく分かっていると、このギャップが力みになる。そうすると、人間というのは、どんどん着飾っていく方向に進み、一生懸命「自分は凄い」と言わないと不安になってしまう事になる。

 

 そういう意味でスポーツ選手がタレント化商品化するっていうと、サッカーとか野球とかのようにリーグからお金が出ている場合は良いんです。プレーをしているだけでお金をもらっていけるのですが、我々みたいなオリンピック系やアマチュア系の競技は、結局競技からお金が入らないんですね。そうすると
スポーツによって高まった自分の知名度をどう換金するか
というビジネスになるんです。つまり、結局最後はスポンサー収入しかないんです。競技をうまくブリッジさせて収入を得るという方法となるんですが、その点が難しかったなと思いました。ただ、やりました。食ってかなきゃいけないんで、自分をどうやってブランディングするかって。

 

 自分自身の肩書きみたいなものを、最初はハードル選手とやっていたのですが、ハードル選手はあまりにも売れなさ過ぎて、ハードル選手(という肩書き)では俺はお金を稼げないんだと気づくわけですね。でそうすると何に変えていくかというと、結局

自分は社会のどのニーズを満たしているのだろうか
ということを考えていくんです。そんな時、周りの話を聞いていくと、「あなたは体の専門家っぽいから(教えて欲しい)、普段何を食べている?何時に寝ているの?」などといった話が多く、外から見てみると俺がハードルを早く跳べるといったことはそれほど重要ではなくて、それよりも「それを職業にしている人は日々何をに気をつけているのか」といったものの方が、一般の人からすると価値が高いと気付いたのです。自分はハードルの何かではなくて、体の専門家のようなポジションに置き換えると、社会的なニーズを満たせるのだと感じました。

 

 自分はプロになって商品になるのだと思い、意思決定した時に何が起きるかというと、もう自分が何をやりたいかというのは関係ないんです。相手の立場で何が欲しいかということだけが関係してくる。そのために自分は何が売れるのかと気づくことが大事なのだと思いました。

 もちろん深く入っていくとそれだけではない世界があると思うのですが、少なくとも、ある短期的に自分が収入を得ながら生きていくためには、皆さんに買っていただきたいように自分を改造します。改造しても成りきれない部分は、あるままで売れるようにワードを変えます。このように生きていくしかないなと思ったわけです。良いのか悪いのかは未だに分かりませんが、もしそれじゃなくてもやっていけるスポーツ選手であれば、そっちの方が良いと思うのですが、ほとんどのアマチュア競技はそれをやらないと食っていかれないので、

自分自身をいかに商品化するかということはある程度必要
なのかなぁと思います。市場に媚びることにもなりますから、それが悪いことだとは思わないのですが、そういった問題は現役時代多少あったかなと思いました。

 

大久保

(ああ、とてもよく分かるお話…涙。世間の人は五輪開催時期になれば湧き上がりますが、普段からアマチュアスポーツや五輪競技を追っている人は少ないので、つまり市場が小さいんですよね。だからアマチュア選手は競技活動資金を確保する以前に、スポーツで食べていかれない。おまけに、スポーツでお金を稼ぐことは日本の美徳に反する!とか、スポーツ=遊びなんだから社会的地位が低いんだ!といったことが往々にしてあって、先進国でGDP世界第3位でありながら、スポーツが文化としてもビジネスとしても発展途上であるのは、競技者や競技関係者の経済的な側面からの観念と、社会の受け入れ方やニーズとの乖離から、そういった現象が起こってしまうんですよね…)

 

なんて心の中で思いながらも、為末さんがとても丁寧に言葉を選びながら、誤解されないようにお話しされている姿に、尊敬の念を抱きました。

 

この質問の後、社会人の方々からの「現場の仕事に不満があるんですが、維持するか転職するか、一体何をポイントに考えるべきでしょうか?」「昇格を打診されますが躊躇してしまいますどうすべきでしょうか?」「自分でやっていることが他人に理解されない時、どんな気持ちを持つべきでしょうか?」「モチベーションを上げるにはどうしたらよいでしょうか?」という4つの質問に、お答えされていましたが割愛しますので
ぜひ為末大さんの「逃げる自由」を読んでヒントをつかんでみてください。

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